技術・オペレーションのマネジメント 2022年秋 (WBS)

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2022年度秋クオーター
「技術・オペレーションのマネジメント」
(2019年度秋学期ティーチング・アワード総長賞受賞科目)
授業シラバス

2022.9.27現在

― Post COVID-19の新しい対面授業を一緒に作りたいと思う人へ ―

通常の授業中の一風景

 

授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
オフィス: 早稲田キャンパス11号館1136号室
学期・曜日・時限: 秋クオーター / 土曜日 / 5限(16:30-18:00)、6限 (18:15-19:45)
教室:  3号館202号教室 (予備として203号教室)
ティーチング・アシスタント: 辻紗都子、瀬戸口長利
授業に関する連絡先: tomj-staff@list.waseda.jp

 

[授業に関する質問等のコンタクトの方法]

  • 授業の運営に関する質問は個別メールなどではなく、授業のslackの質問チャンネルを活用して下さい。個別に質問し答えを求めるよりも、そのプロセスを履修者全体のコミュニケーションとして共有することにより、授業運営の負荷が減ることに貢献することになります。
  • 授業運営について個別に相談したいことはまずはティーチング・アシスタントまでご連絡下さい。
  • 授業担当者へ個別に相談がある場合には、kanetaka-sec@kanetaka-maki.org (牧+秘書のアドレス)までご連絡下さい。「牧兼充へのコンタクトの取り方」を参照のこと。

[授業担当者-関連情報]

 

このシラバスは、ゲストスピーカーのスケジュール、COVID-19感染状況、授業の進捗などにより、今後必要に応じて変更があることに留意のこと。

 

1. 授業概要

本授業は、「技術・オペレーションのマネジメント」という授業名がついているが、その枠組みを基盤としながら、「イノベーションのマネジメント」までを扱う。

事実上は「イノベーションのマネジメント」に関する授業である。大企業からスタートアップまでを含めた組織が、如何にして新たなイノベーションを産み出していけば良いのかを多様な観点から学んでいく。

従来の「技術・オペレーションのマネジメント」(TOM)という授業は、技術経営と生産管理という二つの相互に関連する異なるトピックから成り立ってきた。TOMは、ハーバードビジネススクールを中心に発展してきた経営学の一分野であり、初期のTOMは、製品の開発・製造を含めた生産管理が中核であった。その後、情報通信技術、サプライ・チェーン、サービス産業の台頭などにより、生産管理の研究領域が拡大し、それに伴いTOMの研究領域も変化してきた。そして、現在のTOMは、製品やサービスの開発・製造における技術経営及びイノベーション・マネジメントに関する知見を提供することが主流となっている。

このコースにおいては、技術経営及びオペレーションの基礎をカバーし、可能な限りイノベーションに関する先端領域に関する知見を提供する。このコースは、ケース・ディスカッション、事前課題、講義、実務家などのゲストスピーカーにより構成される。履修者はTOMの分野の基礎となるフレームワークを学び、その実務への応用方法についてケース・ディスカッションを通じて体験する。

このコースでは、以下の3タイプの履修者を想定している。

  • 社内で新たなイノベーションを創出することを求められている人
  • 広い意味で「科学・技術」に関わる仕事に携わっている人
  • オペレーションの基礎を学びたい人
  • せっかくビジネススクールに学びにきたので、今までになかった視野を広げたい人

この授業は多様な分野の「科学・技術」について扱うが、履修にあたってバックグラウンドとしての文系・理系を問わない。また先端的な事例を扱うため、英語のケース教材も含まれているが、語学力は問わない。

この授業は過去5年間担当している中で、新たな領域を開拓してきた。一方で、この授業は選択コア科目であることに鑑み、今年度は「技術・オペレーションのマネジメント」分野の原点回帰を試みる。特に、長内先生とも相談しながら、授業間の整合性を図る。また、5年間の蓄積の中で、課題などの負荷が高くなりすぎてきたので、全体的にスリム化を目指す。

[授業形態]

対面を基本とし、授業に参加できない学生には、授業の収録ビデオを提供する。いわゆる狭い意味での「ハイブリッド型」(教室とオンラインの同時参加)は行わない。COVID-19等の感染症に罹患し欠席するケースにおいては、成績に特別の配慮を行うので、相談すること。

COVID-19の感染対策のために過去2年半の間、オンライン授業、ハイフレックス授業を実施してきたが、COVID-19以前と同水準の授業が実現できているとは言い難い。WBSは対面の授業の参加を前提に入学しており、対面で参加する学生の学習効果を最大化することが重要と考えている。

オンデマンドによる収録ビデオの提供、COVID-19等の感染症罹患により対面参加ができない場合に成績に不利益が生じないことで、Equity, Diversity, Inclusion, and Belongingsの要件も満たしていると考えている。

2. 授業の到達目標

このコースが終了までに:

  1. イノベーションを生み出すために必要なフレームワーク・手法を活用できるようになる。
  2. 科学・技術をベースとしたビジネスを分析するために必要なフレームワークを活用できるようになる。
  3. オペレーションの基礎知識を活用できるようになる。
  4. 科学・技術を活用したビジネスにおける倫理に関して自分なりの価値基準をもてるようになる。
  5. 技術・オペレーション分野のオーバービューを理解し、今後自分自身で継続的に学び続ける手法を身につける。

3.事前・事後学習の内容

  • 履修者は、指定されたケース教材を読み込み、事前課題について議論の準備をすることが求められる (1ケースにつき、2-3時間程度の準備を想定)。
  • 授業後の課題として、Takeawayの提出が求められる。
  • 授業中に行ったワークのまとめの提出が求められる。
  • 対面・オンラインのコミュニケーションにおいての貢献がが求められる。
  • この授業では、英語のケース教材が含まれている。なお、英語のケース教材の回は、コールド・コールを行わないなど、英語が苦手な者へ配慮する。イノベーションを扱う授業なので、可能な限り言語のハンディキャップは、テクノロジーを活用して解決することを推奨する。

4. 授業計画

あくまで現時点での予定であり、変更の可能性に留意のこと。

スケジュール タイトル 内容 事前課題 事後課題
週・日付 時限
第1週
(10/1)
5限 イントロダクション
  • 授業の概要の説明
  • AI時代の学び方
  • COVID-19時代の学び方のイノベーション
授業のシラバスに軽く目を通す なし
6限 デザイン思考(1)
  • ワークショップ形式によるデザイン思考の基礎
  • イノベーションを生み出す文化
なし 授業内作業のまとめ
第1週Takeaway
第2週
(10/8)
5限 デザイン思考(2)
  • ワークショップ形式によるデザイン思考を活用したアイディア創出法
なし 授業内作業のまとめ
6限 イノベーション創出のオペレーション
  • ケース「IDEOの製品開発」のディスカッションを通じて、イノベーションの創出プロセスについて学ぶ。
ケース教材「IDEOの製品開発」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 第2週Takeaway
第3週
(10/15)
5限 サービスビジネスのオペレーション
  • ケース「ベニハナ・オブ・トーキョー」のディスカッションを通じて、サービスビジネスのオペレーションの基礎について学ぶ。
ケース「ベニハナ・オブ・トーキョー」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 第3週Takeaway
授業内グループ作業のまとめ
6限 オペレーションの基礎
  • シミュレーション「Benihana」を活用して、オペレーションの基礎を学ぶ。
教室内でシミュレーションを扱えるようにPCを持ってくること。 シミュレーションの結果の提出
第4週
(10/22)
5限 製品開発のオペレーション
  • ケース「チーム・ニュージーランド(A)」のディスカッションを通じて、製品開発のオペレーションの基礎について学ぶ。
ケース「チーム・ニュージーランド(A)」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 授業内グループ作業のまとめ
6限
*1
科学的思考法
  • イノベーション、新事業開発に必要となる「科学的思考法」についてワークショップ形式で学ぶ。
なし 第4週Takeaway
第5週
(10/29)
5限 実験する組織
  • ケース「Booking.com」を通じて、実験のイノベーションの重要性、実験する組織のオペレーションについて学ぶ。
ケース「Booking.com」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 授業内グループ作業のまとめ
6限 メタバース・Web3時代の企業組織
  • ゲストスピーカー: 長橋賢吾氏 (野原ホールディングス株式会社取締役グループCFO)
  • メタバース・Web3の概要と企業組織へのインパクトについて学ぶ。
TBD (検討中: DAOに関する文献を読み、これからのMBAの役割について考えてきていただきます。) 講師へのフィードバック
第5週Takeaway
第6週
(11/12)
5限 プラットフォーム
  • ケース「ウーバー: 世界の移動手段を変革する」のディスカッションを通じて、プラットフォームの基礎理論を学ぶ。
ケース「ウーバー: 世界の移動手段を変革する」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 授業内グループ作業のまとめ
6限 *1 技術経営の基礎理論
  • ワークショップ形式にて、プラットフォームの基礎理論について学ぶ。
なし 事後ビデオ「プラットフォーム」
第6週Takeaway
第7週
(11/19)
5限 SCMと持続的な地球環境
  • ケース「漁師銭本慧」のディスカッションを通じて、持続可能な地球環境とSCMの関係について学ぶ。
ケース「漁師銭本慧」(準備中)を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 授業内グループ作業のまとめ
6限 システム思考 / COVID-19時代のSCMと新技術
  • ゲストスピーカー: 大森俊一氏 (早稲田大学 創造理工学部経営システム工学科准教授)
  • 課題解決の手法としてのシステム思考の基礎を学ぶ。
  • COVID-19、ウクライナ戦争により大きく変化しつつあるSCMの現状及び新技術について学ぶ。
なし 講師へのフィードバック
第7週Takeaway
第8週
(11/26)
5限 インクルーシブ・イノベーション
  • ケース「Cipla」を通じて、イノベーションをいかにして、「すべての人」に届けるか、イノベーションと倫理の関係について学ぶ。
ケース「Cipla」を読み込み、事前設問の解答を考えてくること。 授業内グループ作業のまとめ
6限 まとめ
  • 授業全体のWrap-upを行う。
なし 第8週Takeaway

*1 – 45分で終了予定。

5. 授業の進め方

  • ディスカッション主体。この授業では、学生の積極的な参加が特に重要である。履修者は授業全体を通じて積極的な参加が求められる。ディスカッション時には「発言の質」において貢献することが求められる。
  • ケース・ディスカッションにおいては、学生の事前の予習が強く求められる。事前準備を手助けするために、「事前課題」が準備されている。これらの「事前課題」は、ケース・ディスカッションをキックオフする役割を担う。
  • 授業をインタラクティブにするために、ITツールを積極的に利用する。PC、スマートフォン、タブレットを授業時に活用できるように準備しておくこと。

6. 教科書

  • 授業担当者が選別したケース教材・論文・文献の抜粋等を集めたコースリーダー。Waseda Moodleの授業ページを参照のこと。

7. 参考文献

  • 授業においてその都度紹介する。

8. 成績評価方法

  • 授業の出席 – 20%
    • 授業後のTakeaway提出によって判断。
  • ディスカッションへの貢献度 – 50%
    • 授業時の発言及びオンライン・ディスカッションへのポストを総合的に判断する。
  • 授業時に指定される演習 ・課題 – 20%
    • 授業で行う各種演習の提出状況を評価する
  • Learning Communityへの貢献 – 10%
    • 他者の学習に貢献する行動について加点する。

[クラス・ディスカッションへの貢献度とは]

  • 効果的にクラス・ディスカッションへ貢献するために重要なのはその頻度(量)ではない。
  • 以下の指標を参考にすること。
    1. 他者の発言を積極的に聞いているか。その発言はその時点のディスカッションに関連性が高いのか。過去のコメントにどのように繋がっているのか。過去と同じことを繰り返しているだけではないか。
    2. 自説を述べるのではなく、ケース分析によるエビデンスもしくは過去の経験に基づいているのか。
    3. 新しいアイディアをテストしようとしているか、それとも安全なコメントをしようとしているか。具体的には、ケースに記述されている事実を繰り返し述べるだけのコメントは、「安全なコメント」と見なされる。
    4. コメントは、過去のコメントに積み上げる形で、ケースの深い理解につながっているのか。他者の学びに貢献できているのか。

[採点プロセスの公開について]

  • 授業で獲得した点数は、適宜Moodle上でフィードバックする。採点ミスがないか確認すること。授業終了時に確認期間を儲けるので、その際に必ず確認すること。期限までに申し出がない場合には、採点結果に同意したものとして最終成績を確定する。

[課題の締め切り後の提出について]

  • 授業における課題の締め切りは、学生の学習効果の最大化のための、学習のペースを保つことを目的にしている。
  • 以上の理由により、この授業においては、全ての課題について、締め切り後の提出を認めない。

9. 授業履修に際しての Honor Code

  • 早稲田ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
  • 本授業におけるHonor Code
    • 全ての課題については、履修者同士で相談しても構わない。必要に応じて、スタディ・グループで議論することを推奨する。
    • 全ての授業準備、課題については、過去の授業の履修者、もしくは他大学における配布資料・ノート・授業スライドなどを参照することを禁止する。
    • 同様の理由で、授業課題の締め切り後 (授業でディスカッションを行った後)の提出は受け付けない。

10. “Equity, Diversity, Inclusion, and Belonging”の尊重

  • この授業は、インクルーシブであることを前提としています。
  • この授業では、すべての学生が、人種、自認する性別、性的指向性、社会的地位、年齢、障害の有無、宗教、出身地域、国籍、言語の得意・不得意、その他個々人の多様性を生み出すものすべての観点において、同等に学ぶ権利を提供することを目指しています。
  • この授業がインクルーシブであるほど、多様性が生まれ、イノベーションや創造性が強化され、皆さんの学びの体験が向上します。
  • インクルーシブや授業の実現のためには、履修者の皆さんのご理解が不可欠です。どうか積極的に参加し、助け合って、そして皆さんのピアのことの理解を深めてください。多様性、人とは違うということを相互にリスペクトし、それを強みにしましょう。
  • 授業のオンライン化・ハイフレックス化は、学生が授業に「所属している」(Belonging)という感覚を減少させました。この授業では対面を重視することで、また多様な工夫を取り込むことにより、履修者の皆さんの”Belonging”を大切にして、より良いラーニング・コミュニティの構築を目指します。

11. 本授業を担当するにあたっての教育理念

私が本授業を担当するにあたっての教育理念は以下の通りです。

  • 質の高いLearning Communityの醸成: 教員と学生の両方が授業にコミットすることが前提です。
  • Peer Effect: 学生個々人の行動は、自分のみならず他者の学習の質に影響するという責任感を持つ人が集まる授業であること。そこに賛同いただけない方にまでInclusiveである必要はないと考えています。
  • Equity, Diversity, Inclusion and Belonging: あらゆるバックグラウンドの人がrespectされる授業でありたい。ただし、EquityなきDiversity and Inclusionは成り立たないと考えています。
  • クラブ財としての授業: Learning CommunityはLife Longです。学費を払ってるのだから良いサービスを受けて当然という思考性の方は、学費を払わなくなったら人間関係がそこで終了します。クラブ財は会費制による相互によるcommonsの構築・運営により成り立ちます。そのために一人ひとりの「貢献」が求めます。
  • Learning Scienceとしての実践: 「学びの科学」を前提として授業構成を考えています。教室は楽しくワクワクする空間である必要があります。講義形式(Explanation)ではなく、体験型(Experiential)な授業構成を最大限目指します。
  • 先端的なテクノロジーの活用: この授業は新しいテクノロジーを積極的に導入します。TAによるサポートを前提としますが、各自でITリテラシーを向上していただくことを求めます。
  • 実験と失敗: 授業では常に新しい授業の形を追求します。常に新しい「実験」を試みますが、当然失敗することも数多くあると思います。そのプロセスも含めて、皆様にイノベーションとは何かを学んでいただきます。

12. その他の注意事項

  • この授業の履修確定は2週目の授業に参加した時点で行う。第1週目の内容により履修しないことを決めた場合も、担当教員に連絡する必要はない。
  • 2週目以降の授業のアナウンスはSlackにて行う。
  • Cohort Book (履修者・聴講者のプロフィールをまとめたもの): 授業のディスカッションのクオリティを上げるために活用させていただく。(2週目の提出)
  • スタディ・グループ: 相互に課題などを助け合うためのスタディ・グループを設ける。
  • 授業のトピックに関わるゲスト・スピーカー、ゲスト・ディスカスタントなどをお呼びすることがあるので、あらかじめご了解いただきたい。
  • 提出いただいたtakeawayや課題などは、授業での議論の活性化を目的として、実名で履修者やゲスト・スピーカー、ゲスト・ディスカスタントに共有するので、あらかじめご了解いただきたい。

13. その他の関連情報

[ティーチング・アワード総長賞受賞にあたってのインタビュー記事]

[過去の履修者の感想]