技術・オペレーションのマネジメント 2021年秋 (WBS)

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2021年度秋クオーター
「技術・オペレーションのマネジメント」
(2019年度秋学期ティーチング・アワード総長賞受賞科目)
授業シラバス

2021.9.24現在

― コロナ前の授業で良かったものがなくなることを阻止したいと思う人へ ―

 

授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
オフィス: 早稲田キャンパス11号館1136号室
学期・曜日・時限: 秋クオーター / 土曜日 / 5限(16:30-18:00)、6限 (18:15-19:45)
教室:  3号館202 & 203教室
ティーチング・アシスタント:  西田美和子 (nishida.miwako@ruri.waseda.jp)、金紅愛(hongai514@gmail.com)、Paisalachpong Shanabodee (merck.p@akane.waseda.jp)
授業に関する連絡先: tomj2021-staff@list.waseda.jp

 

[授業に関する質問等のコンタクトの方法]

  • 授業の運営に関する質問は個別メールなどではなく、授業のslackの質問チャンネルを活用して下さい。個別に質問し答えを求めるよりも、そのプロセスを履修者全体のコミュニケーションとして共有することにより、授業運営の負荷が減ることに貢献することになります。
  • 授業運営について個別に相談したいことはまずはティーチング・アシスタントまでご連絡下さい。
  • 授業担当者へ個別に相談がある場合には、kanetaka-sec@kanetaka-maki.org (牧+秘書のアドレス)までご連絡下さい。「牧兼充へのコンタクトの取り方」を参照のこと。

[授業担当者-関連情報]

 

このシラバスは、ゲストスピーカーのスケジュール、COVID-19感染状況、授業の進捗などにより、今後必要に応じて変更があることに留意のこと。

 

1.授業概要

本授業は、「技術・オペレーションのマネジメント」という授業名がついているが、事実上は「イノベーションのマネジメント」に関する授業である。大企業からスタートアップまでを含めた組織が、如何にして新たなイノベーションを産み出していけば良いのかを多様な観点から学んでいく。

従来の「技術・オペレーションのマネジメント」(TOM)という授業は、技術経営と生産管理という二つの相互に関連する異なるトピックから成り立ってきた。TOMは、ハーバードビジネススクールを中心に発展してきた経営学の一分野であり、初期のTOMは、製品の開発・製造を含めた生産管理が中核であった。その後、情報通信技術、サプライ・チェーン、サービス産業の台頭などにより、生産管理の研究領域が拡大し、それに伴いTOMの研究領域も変化してきた。そして、現在のTOMは、製品やサービスの開発・製造における技術経営及びイノベーション・マネジメントに関する知見を提供することが主流となっている。

このコースにおいては、技術経営及びイノベーション・マネジメントの基礎をカバーし、可能な限り先端領域に関する知見を提供する。このコースは、ケース・ディスカッション、事前課題、講義、実務家などのゲストスピーカーにより構成される。履修者はTOMの分野の基礎となるフレームワークを学び、その実務への応用方法についてケース・ディスカッションを通じて体験する。

このコースでは、以下の3タイプの履修者を想定している。

  • 社内で新たなイノベーションを創出することを求められている人
  • 広い意味で「科学・技術」に関わる仕事に携わっている人
  • せっかくビジネススクールに学びにきたので、今までになかった視野を広げたい人

この授業は多様な分野の「科学・技術」について扱うが、履修にあたってバックグラウンドとしての文系・理系を問わない。また先端的な事例を扱うため、英語のケース教材も含まれているが、語学力は問わない。

[授業形態]

対面を基本とし、授業に参加できない学生には、授業の収録ビデオを提供する。いわゆる「ハイフレックス型」(教室とオンラインの同時参加)は行わない。なお、非同期のオンライン・ディスカッションの場も設けるため、対面に参加できない場合にも、成績に不利益が生じることはない。

COVID-19の感染対策のために過去1年半の間、オンライン授業、ハイフレックス授業を実施してきたが、COVID-19以前と同水準の授業が実現できているとは言い難い。WBSは対面の授業の参加を前提に入学しており、夜間主は留学生のように日本国政府による入国制限がかかっているわけではないことなどを鑑みて、対面で参加する学生の学習効果を最大化することが重要と判断した。

オンデマンドによる収録ビデオの提供、対面参加ができない場合に成績に不利益が生じないことで、Equity, Diversity and Inclusionの要件も満たしていると考えている。

今学期は一回だけ休講があり、その補講として、オンライン同期型授業を予定している。

 

2. 授業の到達目標

このコースが終了までに:

  1. イノベーションを生み出すために必要なフレームワーク・手法を活用できるようになる。
  2. 科学・技術をベースとしたビジネスを分析するために必要なフレームワークを活用できるようになる。
  3. 科学・技術を活用したビジネスにおける倫理に関して自分なりの価値基準をもてるようになる。
  4. 先端的な科学・技術に関わるビジネスのオーバービューを理解し、今後自分自身で継続的に学び続ける手法を身につける。

 

3.事前・事後学習の内容

  • 履修者は、指定されたケース教材を読み込み、事前課題を提出することが求められる (1ケースにつき、2-3時間程度の準備を想定)。
  • 授業後の課題として、Takeawayの提出が求められる。
  • オンライン・非同期型のディスカッションでの貢献が求められる。
  • この授業では、英語のケース教材が含まれている。なお、英語のケース教材の回は、コールド・コールを行わないなど、英語が苦手な者へ配慮する。イノベーションを扱う授業なので、可能な限り言語のハンディキャップは、テクノロジーを活用して解決することを推奨する。

 

4. 授業計画

あくまで現時点での予定であり、変更の可能性に留意のこと。

スケジュール トピック 事前課題 事後課題 ゲスト・スピーカー
日付
1 9/25 コースの概要説明

AI時代の新たな学び方

授業のシラバスを読み込む

事前ビデオ「イントロダクション」

デザイン思考ワークショップ(1) 授業内個人作業のまとめ

第1週Takeaway

2 10/2 デザイン思考ワークショップ(2)
デザイン思考 ケース教材「IDEOの製品開発」

 

授業内個人作業のまとめ

第2週Takeaway

3 10/9 ユーザ・イノベーション ケース教材「3Mコーポレーションにおけるイノベーション(A)」

 

事後ビデオ「ユーザ・イノベーション」
実験する組織 ケース「Booking.com」 事後ビデオ「フィールド実験」

授業内グループ作業のまとめ

第3週Takeaway

4 10/16 プラットフォーム ケース「ウーバー: 世界の移動手段を変革する」 事後ビデオ「プラットフォーム」
日本の大企業のイノベーション ケース「Global Catalyst Japanの

オープン・イノベーション(A)」

授業内グループ作業のまとめ

第4週Takeaway

大澤弘治氏 (Global Catalyst Partners Japan マネージングディレクター兼共同創業者)
5 10/23 サービス・イノベーションとオペレーション ケース「ベニハナ・オブ・トーキョー」 シミュレーション“Operations Management Simulation: Benihana V2″
ドローン産業 ケース「Da Jiang Innovations (DJI)」 授業内グループ作業のまとめ

第5週Takeaway

6 10/30 AIと医療 ケース「Zebra Medical Vision」
DXとデジタル庁

 

授業内グループ作業のまとめ

第6週Takeaway

楠正憲氏(デジタル庁統括官 デジタル社会共通機能グループ・グループ長)
7

(*1)

11/6 ゲノム産業 ケース「23andMe: Genetic Testing For Consumers (A)」
イノベーション・トーナメント ケース「イノセンティブ・ドットコム(A)」 授業内グループ作業のまとめ

第7週Takeaway

8

(*2)

11/20 インクルーシブ・イノベーション ケース「Cipla」
まとめ

ゲストスピーカー

授業内グループ作業のまとめ

第8週Takeaway

調整中

*1: 11/13 は授業担当者出張のため休講、補講を11/65、6限にオンライン (Zoom)にて行う。

*2: 5、6限連続で行う予定。

 

5. 授業の進め方

  • ディスカッション主体。この授業では、学生の積極的な参加が特に重要である。履修者は授業全体を通じて積極的な参加が求められる。ディスカッション時には「発言の質」において貢献することが求められる。
  • ケース・ディスカッションにおいては、学生の事前の予習が強く求められる。事前準備を手助けするために、「事前課題」が準備されている。これらの「事前課題」は、ケース・ディスカッションをキックオフする役割を担う。各回の開始時には、履修者のうち数人が指名され、特定の質問への答えを求められる。その後、ディスカッションを授業のクラス全体に広げる。クラス全体で、ケースに関する深い分析を試みる。
  • 授業をインタラクティブにするために、ITツールを積極的に利用する。PC、スマートフォン、タブレットを授業時に活用できるように準備しておくこと。

 

6. 教科書

  • 授業担当者が選別したケース教材・論文・文献の抜粋等を集めたコースリーダー。Waseda Moodleの授業ページを参照のこと。

 

7. 参考文献

  • 授業においてその都度紹介する。

 

8. 成績評価方法

  • ディスカッションへの貢献度 – 40%
    • 授業時の発言及びオンライン・ディスカッションへのポストを総合的に判断する。
  • 事前課題 – 30%
    • ケース・ディスカッションに関する事前課題
  • 授業時に指定される演習 – 30%
    • 授業で行う各種演習の提出状況を評価する

[クラス・ディスカッションへの貢献度とは]

  • 効果的にクラス・ディスカッションへ貢献するために重要なのはその頻度(量)ではない。
  • 以下の指標を参考にすること。
    1. 他者の発言を積極的に聞いているか。その発言はその時点のディスカッションに関連性が高いのか。過去のコメントにどのように繋がっているのか。過去と同じことを繰り返しているだけではないか。
    2. 自説を述べるのではなく、ケース分析によるエビデンスもしくは過去の経験に基づいているのか。
    3. 新しいアイディアをテストしようとしているか、それとも安全なコメントをしようとしているか。具体的には、ケースに記述されている事実を繰り返し述べるだけのコメントは、「安全なコメント」と見なされる。
    4. コメントは、過去のコメントに積み上げる形で、ケースの深い理解につながっているのか。他者の学びに貢献できているのか。

[採点プロセスの公開について]

  • 授業で獲得した点数は、適宜Moodle上でフィードバックする。採点ミスがないか確認すること。授業終了時に確認期間を儲けるので、その際に必ず確認すること。期限までに申し出がない場合には、採点結果に同意したものとして最終成績を確定する。

[課題の締め切り後の提出について]

  • 各回の事前課題は授業のディスカッションの質を高めることを目的としている。また授業時においては、事前課題の解答にも触れる。従って、授業における事前課題を事後に提出することは学習効果を下げることになる。
  • 授業における課題の締め切りは、学生の学習効果の最大化のための、学習のペースを保つことを目的にしている。
  • 以上の理由により、この授業においては、全ての課題について、締め切り後の提出を認めない。

 

9. 授業履修に際しての Honor Code

  • 早稲田ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
  • 本授業におけるHonor Code
    • 全ての課題については、履修者同士で相談しても構わない。必要に応じて、スタディ・グループで議論することを推奨する。
    • 全ての授業準備、課題については、過去の授業の履修者、もしくは他大学における配布資料・ノート・授業スライドなどを参照することを禁止する。
    • 同様の理由で、授業課題の締め切り後 (授業でディスカッションを行った後)の提出は受け付けない。

10. “Equity, Diversity, Inclusion, and Belonging”の尊重

  • この授業は、インクルーシブであることを前提としています。
  • この授業では、すべての学生が、人種、自認する性別、性的指向性、社会的地位、年齢、障害の有無、宗教、出身地域、国籍、言語の得意・不得意、その他個々人の多様性を生み出すものすべての観点において、同等に学ぶ権利を提供することを目指しています。
  • この授業がインクルーシブであるほど、多様性が生まれ、イノベーションや創造性が強化され、皆さんの学びの体験が向上します。
  • インクルーシブや授業の実現のためには、履修者の皆さんのご理解が不可欠です。どうか積極的に参加し、助け合って、そして皆さんのピアのことの理解を深めてください。多様性、人とは違うということを相互にリスペクトし、それを強みにしましょう。
  • 授業のオンライン化・ハイフレックス化は、学生が授業に「所属している」(Belonging)という感覚を減少させました。この授業では対面を重視することで、また多様な工夫を取り込むことにより、履修者の皆さんの”Belonging”を大切にして、より良いラーニング・コミュニティの構築を目指します。

11. 本授業を担当するにあたっての教育理念

私が本授業を担当するにあたっての教育理念は以下の通りです。

  • 質の高いLearning Communityの醸成: 教員と学生の両方が授業にコミットすることが前提です。
  • Peer Effect: 学生個々人の行動は、自分のみならず他者の学習の質に影響するという責任感を持つ人が集まる授業であること。そこに賛同いただけない方にまでInclusiveである必要はないと考えています。
  • Equity, Diversity, Inclusion and Belonging: あらゆるバックグラウンドの人がrespectされる授業でありたい。ただし、EquityなきDiversity and Inclusionは成り立たないと考えています。
  • クラブ財としての授業: Learning CommunityはLife Longです。学費を払ってるのだから良いサービスを受けて当然という思考性の方は、学費を払わなくなったら人間関係がそこで終了します。クラブ財は会費制による相互によるcommonsの構築・運営により成り立ちます。そのために一人ひとりの「貢献」が求めます。
  • Learning Scienceとしての実践: 「学びの科学」を前提として授業構成を考えています。教室は楽しくワクワクする空間である必要があります。講義形式(Explanation)ではなく、体験型(Experiential)な授業構成を最大限目指します。
  • 先端的なテクノロジーの活用: この授業は新しいテクノロジーを積極的に導入します。TAによるサポートを前提としますが、各自でITリテラシーを向上していただくことを求めます。
  • 実験と失敗: 授業では常に新しい授業の形を追求します。常に新しい「実験」を試みますが、当然失敗することも数多くあると思います。そのプロセスも含めて、皆様にイノベーションとは何かを学んでいただきます。
  • 聴講の学生のinclusionと貢献: 聴講も履修者と同じコミットを求めます。より厳密にいうと大学内での教員の評価は履修者数でなされますから、聴講を認めるというのは、教員としては自分の評価は上がらない形でボランタリーに学ぶ場を提供するということです。従いまして、履修者以上に、learning communityへ貢献していただくという前提で受け入れていることをご理解ください。

12. その他の注意事項

  • 既に同一タイトルの授業を履修しているなどの理由でこの授業を聴講として参加することも歓迎する。
  • 聴講者も履修者と同じようにすべての課題を提出し、議論に参加すること。ただし、授業における発言は成績への配慮のため、履修者を優先する。
  • Cohort Book (履修者・聴講者のプロフィールをまとめたもの): 授業のディスカッションのクオリティを上げるために活用させていただく。
  • 授業のアナウンスはSlackにて行う。
  • スタディ・グループ: 相互に課題などを助け合うためのスタディ・グループを設ける。
  • 授業のトピックに関わるゲスト・スピーカー、ゲスト・ディスカスタントなどをお呼びすることがあるので、あらかじめご了解いただきたい。
  • 提出いただいたクラス参加フォームや課題などは、授業での議論の活性化を目的として、実名で履修者やゲスト・スピーカー、ゲスト・ディスカスタントに共有するので、あらかじめご了解いただきたい。

 

13. その他の関連情報

[ティーチング・アワード総長賞受賞にあたってのインタビュー記事]

[過去の履修者の感想]