2026年度 科学技術とアントレプレナーシップ

2026年度夏クォーター

「科学技術とアントレプレナーシップ」

シラバス

2026年2月23日現在 (まだ作成中)

お金を出して魚を買うのではなく、魚の釣り方を学びたいと思う人へ

解説: 授業で扱う論文を印刷した量 (注: 両面印刷)

 

  • 授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
  • オフィス: 早稲田キャンパス11号館1148号室
  • 学期・曜日・時限: 夏クォーター / 月曜日 / 夜間6限(18:30-20:10)、夜間7限 (20:20-22:00) (W-IOI併用)
  • 教室:  調整中 (対面のみ)
  • ティーチング・アシスタント: 吉田 晃宗
  • このシラバスはあくまで暫定版であり、今後必要に応じて変更する。

 

1. 授業概要
  • 大学を中心とした研究機関から創出される科学技術は、新事業創造のための「知」の源泉である。本講義においては、研究機関において、科学技術に関する「知」がいかにして産み出され、またその産み出された「知」からいかにして、スタートアップを含めた産業が創出されるのかについて扱う。この授業では、社会科学 (経済学、経営学等)の先端的な研究をベースに、科学技術に関するビジネス及び政策について議論する 。
  • この授業は、米国の大学院で一般的なセミナー形式である。各回講師がその分野の先端的な定量分析の英語の論文を3本程度指定し、履修者は毎週少なくとも1本は、事前にその論文を読み込むことが求められる。また学期を通じて数回程度、履修者は指定された論文の概要をプレゼンテーションにまとめ発表すること、ディスカスタントとしてクラスの議論をリードすることが求められる。各回は、講師による講義、学生による発表、論文の内容に関するディスカッション により構成される。最終課題として、定量分析を前提とした研究計画の発表が求められる。
  • この授業は、本来であれば博士課程レベルの内容をMBAの学生に提供するものであり、負荷の高い授業であることが予測されるので、そのことを了解した者のみ履修して欲しい。WBSにおいては比較的負荷の高い授業であるかも知れない。
2. 授業の到達目標
  • 科学技術とアントレプレナーシップの研究分野に関する必要な知識を体系的に理解する
  • 科学技術とアントレプレナーシップに関する理論を実務へ応用できるようになる
  • 科学技術とアントレプレナーシップの研究分野に関する”state of the art”(最先端の知見)を理解する
  • 定量分析の論文を読む込みためのスキルを身につける
  • 定量分析の論文の妥当性を評価するためのスキルを身につける
  • 修士論文に相応しい研究テーマを見つける
  • 修士論文をまとめるにあたって必要な研究を行うためのスキルを身につける
  • ビジネススクール修了後も自分の力でアカデミックな理論を学び続ける力を身につける

3.事前・事後学習の内容

  • 各回の授業では、予習として指定された英語の論文3本のうち少なくとも1本読み込んでくることが求められる。ただし、この予習は生成AIを積極的に使うことを前提としているが、自分自身がしっかり内容を理解することを求める。
  • 定量論文を読み込むためには、因果関係の推論などの科学的な思考力が求められる。その訓練をあまりしていない者は、他の履修者よりもより準備に時間を割いてもらうことが前提となる。
  • 英語が得意でないものも、生成AIを活用すれば十分についていける授業であると考えている。

4. 授業計画 

  • 第1回: イントロダクション /  「研究者が国を動かす戦略と実践」
  • 第2回: 科学的思考法
  • 第3回: イノベーションは誰が担うのか: 大企業 vs 小企業
  • 第4回: アントレプレナーはどこから生まれるのか
  • 第5回:  スターサイエンティストはなぜ重要か
  • 第6回: 科学技術の知は、なぜ特定の地域に集積するのか
  • 第7回: なぜ起業活動は特定の地域に集積するのか
  • 第8回: アントレプレナーの活動を促進するものは何か
  • 第9回: ベンチャーキャピタルはなぜ重要なのか
  • 第10回: インセンティブは発明とビジネス化にどの程度重要なのか
  • 第11回: 大学における知財とインセンティブの関係
  • 第12回: 大学発ベンチャーはイノベーションを促進するのか
  • 第13回: 大学発ベンチャーを育む仕組み
  • 第14回: 牧兼充の最新研究 / まとめ

5. 教科書

6. 参考文献

  • その都度、授業において紹介する。

7. 成績評価方法

  • 授業の出席: 25%
  • 論文の発表: 25%
  • ディスカスタントとしての貢献: 25%
  • 最終課題: 25%
8. 備考・関連URL
  • 最新版のシラバスはウェブにて公開されている。常にそちらを確認すること。このシラバスは今後適宜変更を行う。
  • 授業は全てディスカッション形式である。必ず各回の授業の準備をしっかり行ってくること。議論の質は担当教員の力以外にも、履修者の準備の量によって規定される。
  • この授業は、時間通りに開始し、可能な限り時間通りに終了する。授業の質を下げないために、履修者は時間を守ること。全授業に出席することを前提としている。もし欠席する場合には、授業のTAまで事前に連絡すること。
  • 授業担当者の個人サイト : https://www.kanetaka-maki.org/

9. 課題文献

  • 第3回: イノベーションは誰が担うのか: 大企業 vs 小企業
    • J. Acs, Audretsch, D.B. 1988. Innovation in large and small firms: an empirical analysis. The American economic review 678-690.
    • Haltiwanger, et al. 2013. Who creates jobs? Small versus large versus young. Review of Economics and Statistics. 95(2) 347-361.
    • Guzman, Stern, S. 2015. Nowcasting and Placecasting: Entrepreneurial Quality and Performance. University of Chicago Press.
  • 第4回: アントレプレナーはどこから生まれるのか
    • Giannetti, Simonov, A. 2009. Social interactions and entrepreneurial activity. Journal of Economics &
    • Management Strategy. 18(3) 665-709.
    • Lerner, Malmendier, U. 2013. With a little help from my (random) friends: Success and failure in post-business school entrepreneurship. Review of Financial Studies hht024.
    • Azoulay, P., C. C. Liu, and T. E. Stuart. 2017. Social influence given (partially) deliberate matching: Career imprints in the creation of academic entrepreneurs. American journal of sociology 122:1223-1271.
  • 第5回:  スターサイエンティストはなぜ重要か
    • Azoulay, Graff Zivin, J., Wang, J. 2010. Superstar extinction. Quarterly Journal of Economics. 25 549-589.
    • Oettl. 2012. Reconceptualizing stars: Scientist helpfulness and peer performance. Management Science. 58(6) 1122-1140.
    • Azoulay, Pierre, Christian Fons-Rosen, and Joshua S. Graff Zivin. “Does science advance one funeral at a time?.” American Economic Review 109.8 (2019): 2889-2920.
  • 第6回: 科学技術の知は、なぜ特定の地域に集積するのか
    • Agrawal, Cockburn, I., Galasso, A., Oettl, A. 2014. Why are some regions more innovative than others? The role of small firms in the presence of large labs. Journal of Urban Economics. 81 149-165.
    • Fallick, Fleischman, C.A., Rebitzer, J.B. 2006. Job-hopping in Silicon Valley: some evidence concerning the microfoundations of a high-technology cluster. The Review of Economics and Statistics. 88(3) 472-481.
    • Casper. 2007. How do technology clusters emerge and become sustainable?: Social network formation and inter-firm mobility within the San Diego biotechnology cluster. Research Policy. 36(4) 438-455.
  • 第7回: なぜ起業活動は特定の地域に集積するのか
  • 第8回: アントレプレナーの活動を促進するものは何か
    • Yu, Sandy. “How do accelerators impact the performance of high-technology ventures?.” Management Science (2019).
    • K. Agrawal, Catalini, C., Goldfarb, A. 2011. The geography of crowdfunding. National Bureau of Economic Research.
    • Di Gregorio, Shane, S. 2003. Why do some universities generate more start-ups than others? Research Policy. 32(2) 209-227.
  • 第9回: ベンチャーキャピタルはなぜ重要なのか
    • N. Kaplan, Sensoy, B.A., Strömberg, P. 2009. Should investors bet on the jockey or the horse? Evidence from the evolution of firms from early business plans to public companies. The Journal of Finance. 64(1) 75-115.
    • Hellmann, Schure, P., Vo, D. 2013. Angels and Venture Capitalists: Complements or Substitutes? NBER Working Paper.
    • Ewens, M., Nanda, R., Rhodes-Kropf M. Cost of Experimentation and the Evolution of Venture Capital. NBER Working Paper
  • 第10回: インセンティブは発明とビジネス化にどの程度重要なのか
    • Azoulay, Graff Zivin, J.S., Manso, G. 2011. Incentives and creativity: evidence from the academic life sciences. The RAND Journal of Economics. 42(3) 527-554.
    • Ederer, F., and G. Manso. 2013. Is pay for performance detrimental to innovation? Management Science 59:1496-1513.
    • Graff-Zivin, Joshua, and Elizabeth Lyons. The Effects of Prize Structures on Innovative Performance. No. w26737. National Bureau of Economic Research, 2020
  • 第11回: 大学における知財とインセンティブの関係
    • Thursby Fuller, A.W., Thursby, M. 2009. US faculty patenting: Inside and outside the university. Research Policy. 38(1) 14-25.
    • Roach, Sauermann, H. 2010. A taste for science? PhD scientists’ academic orientation and self-selection into research careers in industry. Research Policy. 39(3) 422-434.
    • Singh, Jasjit, and Lee Fleming. “Lone inventors as sources of breakthroughs: Myth or reality?.” Management science 56.1 (2010): 41-56.
  • 第12回: 大学発ベンチャーはイノベーションを促進するのか
  • 第13回: 大学発ベンチャーを育む仕組み
    • Shane, Stuart, T. 2002. Organizational endowments and the performance of university start-ups. Management Science. 48(1) 154-170.
    • Lerner. 1996. The government as venture capitalist: The long-run effects of the SBIR program. National Bureau of Economic Research.
    • Howell, S. T. 2017. Financing innovation: evidence from R&D grants. American Economic Review 107:1136-1164.
  • 第14回: 牧兼充の最新研究 / まとめ
  • その他のトピック: 科学的思考法
    • Arnaldo Camuffo, Alessandro Cordova, Alfonso Gambardella, Chiara Spina (2020) A Scientific Approach to Entrepreneurial Decision Making: Evidence from a Randomized Control Trial. Management Science 66(2):564-586.
    • Bloom, N., Eifert, B., Mahajan, A., McKenzie, D., & Roberts, J. (2013). Does management matter? Evidence from India. The Quarterly Journal of Economics, 128(1), 1-51.

10. 授業履修に際しての Honor Code

  • 早稲田ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
  • 本授業におけるHonor Code
    • 全ての課題については、履修者同士で相談しても構いません。必要に応じて、グループで議論することを推奨する。

11. この授業におけるAIツール活用に関する方針 (Ethan Mollick氏のシラバスをベースに一部改編)

  • この授業では学生がAI (生成AIを含む様々なAIツール)を活用することを期待している。AIを活用する力は現代社会における必須スキルである。これらのツールの活用の仕方について授業においても取り上げる。
  • 生成AIの限界を理解した上で利用すること
    • あまり深く考えられていないプロンプトを入力すると、質の低い結果が出力される。良い結果を得るためには、プロンプトを工夫する必要がある。これにはそれなりの訓練が必要である。
    • 出力結果の内容を信頼してはならない。出力結果の中には数字や「事実」が含まれるが、自分が元々知識を持っているか、他の参考文献により確認しない限りは、誤ったものとして扱うこと。このツールを活用することで生じる内容の誤りについては、自分で全責任を持たなくてはならない。従って、自分が良く知っているトピックに関して、使いやすいツールであると言える。
    • AIはツールであるが、利用した場合にはその旨を示す必要がある。もしAIを利用した場合には、AIをどのように利用したか、結果を得るためにどのようなプロンプトを利用したかを、全ての課題において具体的に示すこと。AIの利用法を示さないことはHonor Codeの違反であり、不正行為となる。
    • このツールをどういう時に利用するべきかを自覚的に考えること。このツールを利用することが相応しくないと考えられる時には、利用しないこと。

12. Diversity, Equity, and Inclusion”の尊重

  • この授業は、インクルーシブであることを前提としている。
  • この授業では、すべての学生が、人種、自認する性別、性的指向性、社会的地位、年齢、障害の有無、宗教、出身地域、国籍、言語の得意・不得意、その他個々人の多様性を生み出すものすべての観点において、同等に学ぶ権利を提供することを目指す。
  • この授業がインクルーシブであるほど、多様性が生まれ、イノベーションや創造性が強化され、皆さんの学びの体験が向上する。インクルーシブな授業の実現のためには、履修者の皆さんのご理解が不可欠である。どうか積極的に参加し、助け合って、そして皆さんのピアのことの理解を深めていただきたい。
  • 多様性、人とは違うということを相互にリスペクトし、それを強みにして、より良いラーニング・コミュニティを築いていくことを目指す。