2022年度夏クォーター
「Lab to Market: 科学技術の商業化と科学的思考法」
授業シラバス
2022.7.7現在
アントレプレナーシップをサイエンスにしたい人へ
授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
オフィス: 早稲田キャンパス11号館1136号室
学期・曜日・時限: 夏クォーター/ 土曜日 / 5限(16:30-18:00)、6限 (18:15-19:45)
教室: 11-902
ティーチング・アシスタント: 谷口 尚史 & 葛西 信太郎
このシラバスはあくまで暫定版であり、今後必要に応じて変更する。
1.授業概要
この授業は、「技術経営」と「アントレプレナーシップ」の融合領域である。この授業の特徴は、「サイエンス」と「アントレプレナーシップ」の関係を (1) シーズとしての「サイエンス」の商業化、 (2) 新事業創造の手法における「サイエンス」の活用、の 2 つの観点から掘り下げる点にある。更に、この授業では、現在米国の大学で用いられている英語によるアントレプレナーシップの教材を用いる。アントレプレナーシップ教育のカリキュラムは日々進化しており、英語による優れた教材が近年増えているためである。
授業は大きく分けて、二つのトピックを扱う。第一のトピックとして、「科学的思考法」を用いた新事業創出法について学ぶ。リーンスタートアップを始めたとした新事業創造手法は、本来的には「科学的思考法」に基づいた仮説検証のプロセスそのものである。近年の米国のアントレプレナーシップの教科書ではこのような「科学的思考法」をとりあげることが増えている。授業においては、ケース教材、シミュレーション、論文などを活用しながら、「科学的思考法」の新事業創造の基礎について学ぶ。この手法は、WBSが重視する修士論文にも直接役立つものであり、この授業は研究法の側面も持つ。
第二のトピックとして、科学技術からどのように新事業を創出していくのか、技術評価及びビジネスモデル策定に関する多様なフレームワークを学ぶ。更に、早稲田大学オープン・イノベーション戦略研究機構との連携のもと、大学のシーズの評価を行い、ビジネス化の可能性を検証をする。具体的にはNASAにより開発されたQuickLookというフレームワークを用いる。
Lab to Market という授業名はもともと、カリフォルニア大学サンディエゴ校のビジネススクールでスタートした、科学技術を商業化する手法を学ぶためのプログラムであり、近年はハーバードビジネススクールにおいても同様の授業名がある。この授業では、それらの授業で用いられている教材なども積極的に活用する。各回に事前予習課題が配布される。また英語の教材も含まれる。
これらを統合した最終課題として、技術シーズのマーケットの評価をグループ形式にて発表を行う。
2.授業の到達目標
コース終了時に以下の能力を身につけていることを目標とする。
- 仮説検証プロセスに関する思考力
- 科学的思考法を活用した新事業創造手法
- 科学技術の市場性に関するの評価手法
3. 事前・事後学習の内容
- 各回に事前予習を行うことが求められる。
- 割り当てられた技術シーズに関する市場評価を行うことを目的としたグループワークへの積極的な参加が求められる。NASAにより開発されたQuickLookは、20-40時間が必要であると言われており、この作業をグループ・メンバーで分担して行う。
4.授業計画 (主なトピック)
- イントロダクション
- アントレプレナーシップとは何か
- 技術シーズの持ち込み
- 技術評価ワークショップ
- 科学的思考法とは?
- 科学的思考法のアントレプレナーシップ分野での活用
- ナラティブとプレゼンテーション
- 中間発表とフィードバック
- 最終発表
詳細は「スケジュール・課題など」の項目を参照のこと。
5.教科書
- 授業担当者が厳選したコースパケット (ケース・論文など) – オンライン配布
- 授業担当者が作成した課題のためのテンプレート – オンライン配布
- デイビッド・J・ブランド、アレックス・オスターワルダー著、「ビジネス・アイデア・テスト – 事業化を確実に成功させる44の検証ツール」、2020年
6.参考文献
- 牧兼充著、「イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学」、東洋経済新報社、2022年
- S・オーレンゲ著、「アイデア・エヴァリュエーション」、九州大学出版会、2017年
- ビル・オーレット著、「ビジネスクリエーション」、ダイアモンド社、2014年
- ヴィジェイ・クーマー著、「101デザインメソッド -革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」」、2013年
- ナンシー・デュアルテ著、「ザ・プレゼンテーション」、ダイヤモンド社、2012 年
- Harvard Business Publishing, “Core Curriculum: Entrepreneurship Reading”
- Harvard Business Publishing, “Entrepreneurship Bundle: Implementing an Innovation Strategy”
- Stephen Spinelli and Rob Adams, “New Venture Creation: Entrepreneurship for the 21st Century 10th Edition”, McGraw-Hill Education, 2015
- Heidi M. Neck, Christopher P. Nech, and Emma L. Murray, “Entrepreneurship: The Practice and Mindset”, SAGE Publications, 2017
7.成績評価方法
項目 | 割合(%) | 評価基準 |
クラスへの貢献点 | 30% | 授業の出席、発言回数、発言の質などによって評価する。 |
事前課題の提出 | 30% | 各回の事前課題の提出状況及び必要に応じてその質により評価する。 |
最終発表 | 40% | 最終発表会のプレゼンテーションの質により評価する。 |
8.備考・関連URL
- 授業履修に際しての Honor Code
- 早稲田大学ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
- 本授業における Honor Code
- 全ての課題については、履修者同士で相談しても構わない。必要に応じて、グループで議論することを推奨する。
- 全ての授業準備、課題については、過去の授業の履修者、もしくは他大学における配布資料・ノート・授業スライドなどを参照することを禁止する。
- “Equity, Diversity, Inclusion, and Belonging”の尊重
- この授業は、インクルーシブであることを前提としています。
- この授業では、すべての学生が、人種、自認する性別、性的指向性、社会的地位、年齢、障害の有無、宗教、出身地域、国籍、言語の得意・不得意、その他個々人の多様性を生み出すものすべての観点において、同等に学ぶ権利を提供することを目指しています。
- この授業がインクルーシブであるほど、多様性が生まれ、イノベーションや創造性が強化され、皆さんの学びの体験が向上します。
- インクルーシブや授業の実現のためには、履修者の皆さんのご理解が不可欠です。どうか積極的に参加し、助け合って、そして皆さんのピアのことの理解を深めてください。多様性、人とは違うということを相互にリスペクトし、それを強みにしましょう。
- 授業のオンライン化・ハイフレックス化は、学生が授業に「所属している」(Belonging)という感覚を減少させました。この授業では対面を重視することで、また多様な工夫を取り込むことにより、履修者の皆さんの”Belonging”を大切にして、より良いラーニング・コミュニティの構築を目指します。
9.スケジュール・課題など
第1回 (6/4 6限): イントロダクション | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト (参考) |
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オンデマンド授業1: 大学の技術の商業化 | |
トピック |
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課題 |
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文献リスト(参考) |
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第2回 (6/11 5限): イノベーションにおけるプロトタイプの役割 | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト (必須) |
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第3回 (6/11 6限): 科学技術の商業化 (1) | |
トピック |
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事前課題 |
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オンデマンド2: 科学的思考法の基礎 | |
トピック |
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課題 |
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第4回 (6/18 5限): 科学技術の商業化 (2) | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(必須) |
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第5回 (6/18 6限): 早稲田大学を取り巻くスタートアップ・エコシステム | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(参考) |
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オンデマンド3: 特許 | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(参考) |
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第6回 (6/25 5限): イノベーションにおける仮説検証プロセス | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(必須) |
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第7回 (6/25 6限): 科学技術の商業化 (3) / ブレインストーミングと仮説検証 | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(オプション) |
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第8回 (7/2 5限): イノベーションを創出するためのエコシステム | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(必須) |
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文献リスト(参考) |
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第9回 (7/2 6限): 大学を基盤とした科学技術の商業化 | |
トピック |
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事前課題 |
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オンデマンド4: オンデマンドの商業化 | |
トピック |
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事前課題 |
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参考 |
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第10回 (7/9 5限): 科学技術の商業化プロセス | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(必須) |
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第11回 (7/9 6限): 科学技術の商業化 (4) – 中間レビュー | |
トピック |
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事前課題 |
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第12回 (7/16 5限): NarrativeとStorytellingとプレゼンテーション | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(参考) |
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第13回 (7/16 6限): 科学技術の商業化の理論的背景 / この授業で目指していること / Wrap-up / 担当教員の経験からの履修者へのメッセージ | |
トピック |
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事前課題 |
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文献リスト(参考) |
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第14回・第15回 (7/23 5・6限): 「Quicklookを活用した科学技術の商業化」最終発表会 / Wrap-up | |
トピック |
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事前課題 |
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10.関連情報
- この授業は、以下の大学における授業を参考にしており、授業設計にあたっては様々なアドバイス示唆をいただいた。ここに感謝したい。
- カリフォルニア大学サンディエゴ校 “Lab to Market” (担当: Vish Krishnan教授)
- 九州大学ビジネススクール「産学連携マネジメント」(担当: 高田仁教授)
- 授業への持ち込みのご協力をいただく主な研究シーズ
- 深層学習を用いた人間工学データ拡張技術の検討 /河合 隆史 (早稲田大学)
- パーソナルモビリティ /亀﨑 允啓 (早稲田大学)
- 空気エンジン /小野田 弘士 (早稲田大学)
- 光や熱で曲がる有機材料 / 朝日透 (早稲田大学)
- バイオフィードバック / 三木 則尚 (慶應義塾大学)
- 触り心地の定量的評価技術 /竹村 研治郎 (慶應義塾大学)
- 授業運営スタッフ
- ティーチング・アシスタント
- 谷口 尚史 (WBS2021年度修了)
- 葛西 信太郎 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2021年度修了)
- シーズ探索サポート
- 塩月亨氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員)
- ティーチング・アシスタント
- 授業運営協力者
- ゲスト参加
- 高田仁氏 (九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターセンター長 / 経済学研究院産業マネジメント部門 (ビジネススクール) 教授 – オンデマンド
- 上條由紀子 氏 (長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター教授・弁理士) – オンデマンド
- 朝日透氏 (早稲田大学理工学術院教授 / WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 実行副委員長)
- 島岡未来子氏 (早稲田大学政治経済学術院教授(公共経営専攻)/ 神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーションスクール教授 /WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 事務局長)
- 喜久里要氏 (早稲田大学 リサーチイノベーションセンター知財・研究連携担当課長(知財・研究連携支援、アントレプレナーシップ担当))
- 山本貴史氏 (株式会社東京大学TLO代表取締役社長) – オンデマンド
- 鎌田富久氏 (TomyK代表)
- 最終審査員
- 阿部博 / 有限責任あずさ監査法人パートナー/公認会計士
- 大澤弘治, Ph.D. / Global Catalyst Partners Japan Managing Director
- 太田裕朗, Ph.D. / 早稲田大学ベンチャーズ共同代表
- 木村英一郎, Ph.D. / 江崎グリコ 経営企画部事業開発担当部長
- 櫻井直樹, Ph.D. / Founder and CEO, HISHOH Biopharma Co., Ltd.
- 牧兼充, Ph.D. / 早稲田大学ビジネススクール准教授
- メンター
- 渡邊崇之氏 (早稲田大学OI機構ファクトリー・クリエイティブ・マネージャー、早稲田大学リサーチ・イノベーション・センター招聘研究員、WBS2018年度修了)
- 天野達郎氏 (早稲田大学OI機構クリエイティブ・マネージャー、早稲田大学リサーチ・イノベーション・センター招聘研究員、WBS2020年度修了)
- 森田善仁氏 (早稲田大学OI機構クリエイティブ・マネージャー、早稲田大学リサーチ・イノベーション・センター招聘研究員、WBS2019年度修了)
- 葛西 信太郎 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2021年度修了)
- 土肥淳子氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2017年度修了)
- 高木博史氏 (WBS2021年度修了)
- ゲスト参加