2020年度夏クォーター
「Lab to Market: 科学技術の商業化と科学的実験」
授業シラバス
2020.6.15現在
アントレプレナーシップをサイエンスにしたい人へ
授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
オフィス: 早稲田キャンパス11号館1136号室
学期・曜日・時限: 夏クォーター/ 月曜日 / 7限(18:50-20:20)、8限 (20:30-22:00)
教室: Zoomにて開催
ティーチング・アシスタント: 川村 聡宏 & 関田 康人
授業に関する連絡先: l2m-2020-staff@kanetaka-maki.org
このシラバスはあくまで暫定版であり、今後必要に応じて変更する。プリントアウト版・PDF版ではなくウェブ版が最新なので常にウェブ版を参照のこと。
1.授業概要
この授業は、「技術経営」と「アントレプレナーシップ」の融合領域である。この授業の特徴は、「サイエンス」と「アントレプレナーシップ」の関係を (1) シーズとしての「サイエンス」の商業化、 (2) 新事業創造の手法における「サイエンス」の活用、の 2 つの観点から掘り下げる点にある。更に、この授業では、現在米国の大学で用いられている英語によるアントレプレナーシップの教材を用いる。アントレプレナーシップ教育のカリキュラムは日々進化しており、英語による優れた教材が近年増えているためである。
授業は大きく分けて、二つのトピックを扱う。第一のトピックとして、「科学的実験」を用いた新事業創出法について学ぶ。リーンスタートアップを始めたとした新事業創造手法は、本来的には「科学的実験」に基づいた仮説検証のプロセスそのものである。近年の米国のアントレプレナーシップの教科書ではこのような「科学的実験」のデザイン手法をとりあげることが増えている。授業においては、ケース教材、シミュレーション、論文などを活用しながら、「科学的実験」の基礎について学ぶ。
第二のトピックとして、科学技術からどのように新事業を創出していくのか、技術評価及びビジネスモデル策定に関する多様なフレームワークを学ぶ。更に、早稲田大学オープン・イノベーション戦略研究機構との連携のもと、大学のシーズの評価を行い、ビジネス化の検討をする。具体的にはNASAにより開発されたQuickLookというフレームワークを用いる。
Lab to Market という授業名はもともと、カリフォルニア大学サンディエゴ校のビジネススクールでスタートした、科学技術を商業化する手法を学ぶためのプログラムであり、近年はハーバードビジネススクールにおいても同様の授業名がある。この授業では、それらの授業で用いられている教材なども積極的に活用する。各回に事前予習課題が配布される。また教材の多くは英語である。各回の事前予習には、120 分程度かかると想定される。
これらを統合した最終課題は二つある。第一は個人課題として、実務に関連する「科学的実験」のデザインを行い、授業において発表することである。第二はグループによる課題として、技術シーズのマーケットの評価を行った結果を授業において発表することである。
外部から多数の協力者を募っている授業であり、履修者には「ビジネス・プロフェッショナル」としてのコミットメントが求められることを理解して履修いただければ幸いである。
2.授業の到達目標
コース終了時に以下の能力を身につけていることを目標とする。
- 科学技術研究のマーケッタビリティの評価手法
- 仮説検証プロセスに関する思考力
- 科学的実験を活用した新事業創造手法
3. 事前・事後学習の内容
- 各回に事前予習を行うことが求められる。
- 科学的実験のデザインに関する最終課題の提出が求められる。
- 割り当てられた技術シーズに関する市場評価を行うことを目的としたグループワークへの積極的な参加が求められる。NASAにより開発されたQuickLookは、20-40時間が必要であると言われており、この作業をグループで分担して行う。
4.授業計画 (主なトピック)
- 詳細は、「スケジュール・課題など」の項目を参照のこと。
- 第 1 回: イントロダクション
- 第 2 回: アントレプレナーシップとは何か
- 第 3 回: アントレプレナーシップを体感する
- 第 4 回: アントレプレナーシップ・コアカリキュラム
- 第 5 回: 技術シーズの持ち込み
- 第 6 回: 技術評価ワークショップ
- 第 7 回: 技術評価ワークショップ
- 第 8 回: 科学的思考法とは?
- 第 9 回: 科学的実験のアントレプレナーシップ分野での活用
- 第 10 回: デザイン思考と科学的実験
- 第 11 回: 科学的実験のシミュレーション
- 第 12 回: 科学的実験の結果の分析
- 第 13 回: Narratives とプレゼンテーション
- 第 14 回: 最終発表会(1)
- 第 15 回: 最終発表会(2)
5.教科書
- 授業担当者が厳選したケース教材を提供する。特に米国のビジネススクールで広まりつつある「科学的実験」に関連する教材を多数含める。
- Harvard Business Publishingによるオンライン教材
- その他、関連するPDFをMoodle/Dropboxにて配布する。
- 授業スライドPDF (授業前にPDFでシェア。次のページをめくらないで!)
6.参考文献
- Harvard Business Publishing, “Core Curriculum: Entrepreneurship Reading”
- Harvard Business Publishing, “Entrepreneurship Bundle: Implementing an Innovation Strategy”
- Stephen Spinelli and Rob Adams, “New Venture Creation: Entrepreneurship for the 21st Century 10th Edition”, McGraw-Hill Education, 2015
- Heidi M. Neck, Christopher P. Nech, and Emma L. Murray, “Entrepreneurship: The Practice and Mindset”, SAGE Publications, 2017
- ビル・オーレット著、「ビジネスクリエーション」、ダイアモンド社、2014年
- S・オーレンゲ著、「アイデア・エヴァリュエーション」、九州大学出版会、2017年
- 隅蔵康一著、「理工系のための特許、技術移転入門」、岩波書店、2003年
- 渡部俊也、隅蔵康一著、「TLOとライセンスアソシエイト」、株式会社BKC、2002年
- 中室牧子・津川友介著、「原因と結果の経済学」、ダイアモンド社、2017 年
- ナンシー・デュアルテ著、「ザ・プレゼンテーション」、ダイヤモンド社、2012 年
7.成績評価方法
項目 | 割合(%) | 評価基準 |
クラスへの貢献点 | 30% | 授業の出席、発言回数、発言の質などによって評価する。 |
事前課題の提出 | 30% | 各回の事前課題の提出状況及び必要に応じてその質により評価する。 |
最終発表 | 40% | 最終発表会のプレゼンテーションの質により評価する。 |
8.備考・関連URL
- 授業履修に際しての Honor Code
- 早稲田大学ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
- 本授業における Honor Code
- 全ての課題については、履修者同士で相談しても構わない。必要に応じて、グループで議論することを推奨する。
- 全ての授業準備、課題については、過去の授業の履修者、もしくは他大学における配布資料・ノート・授業スライドなどを参照することを禁止する。
- “Equity, Diversity, and Inclusion”の尊重
- この授業は、インクルーシブであることを前提としている。
- この授業では、すべての学生が、人種、自認する性別、性的指向性、社会的地位、年齢、障害の有無、宗教、出身地域、国籍、言語の得意・不得意、その他個々人の多様性を生み出すものすべての観点において、同等に学ぶ権利を提供することを目指している。
- この授業がインクルーシブであるほど、多様性が生まれ、イノベーションや創造性が強化され、履修者の学びの体験が向上すると考えられる。
- インクルーシブや授業の実現のためには、履修者の皆さんの理解が不可欠である。積極的に参加し、助け合って、そしてピアのことの理解を深めて欲しい。
- 多様性、人とは違うということを相互にリスペクトし、それを強みにして、より良いラーニング・コミュニティを築いていくことを目指していきたい。
9.スケジュール・課題など
授業開始前: 6/14 (日) 20:00- | |
Zoomを利用した、授業開始前相談会 & 履修者懇親会 | |
第1回 (6/15 7限): イントロダクション & ゲスト・スピーカー | |
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参考 |
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第2回 (6/15 8限): ゲスト・スピーカー | |
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どこかで有志で集まって: アントレプレナーシップ Revisited | |
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事前課題 |
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第3回 (6/22 7限): イノベーションにおけるプロトタイプの役割 | |
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事前課題 |
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第4回 (6/22 8限): 科学技術の商業化 (1) | |
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自習課題 (1回分の授業に相当) | |
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第5回 (6/29 7限): イノベーションにおける仮説検証プロセス | |
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第6回 (6/29 8限): 科学技術の商業化 (2) | |
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事前課題 |
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第7回 (7/6 7限): 科学的実験の結果を分析する | |
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参考 |
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第8回 (7/6 8限): 科学技術の商業化 (3) | |
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第9回 (7/13 7限): 「科学的実験」を実践する組織 | |
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第10回 (7/13 8限): 科学技術の商業化 (4) | |
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事前課題 |
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第11回 (7/20 7限): 「科学的実験のデザイン」中間発表 (英語にて実施) | |
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第12回 (7/20 8限): NarrativeとStorytellingとプレゼンテーション | |
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第13回・第14回 (7/27 7・8限): 「Quicklookを活用した科学技術の商業化」最終発表会 / Wrap-up | |
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授業修了後、8月のどこか | |
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10.関連情報
- この授業は、以下の大学における授業を参考にしており、授業設計にあたっては様々なアドバイス示唆をいただいた。ここに感謝したい。
- カリフォルニア大学サンディエゴ校 “Lab to Market” (担当: Vish Krishnan教授)
- 九州大学ビジネススクール「産学連携マネジメント」(担当: 高田仁教授)
- 授業への持ち込みのご協力をいただく主な研究シーズ
- 「低消費電力コンピューティングを実現するマルチコア技術」
- 笠原博徳氏 (早稲田大学基幹理工学部教授)
- 「ソフトロボット材料への応用を見据えた光・熱屈曲材料の研究」
- 谷口卓也氏 (早稲田大学先進理工学部データ科学センター 講師(任期付)、朝日研究室)、 http://asahi-lab.jp/member/staff/taniguchi.html
- 萩原佑紀氏 (早稲田大学先進理工学研究科博士課程、朝日研究室)、 http://asahi-lab.jp/member/student/2018/hagiwara.html
- 「コオロギによる社会課題解決とビジネス創出に向けた研究」
- 葦苅晟矢氏 (早稲田大学先進理工学研究科博士課程、朝日研究室)、http://asahi-lab.jp/member/student/2017/ashikari.html
- 片岡孝介氏 (早稲田大学先進理工学部助手、朝日研究室)、http://asahi-lab.jp/member/staff/kataoka.html
- 「インプラント人工透析システム」
- 三木則尚氏 (慶應義塾大学理工学部教授)
- 「超音波モータ」
- 竹村研治郎氏 (慶應義塾大学理工学部教授)
- 「クアンタム・コンピューティング」
- ロッド・ヴァン・ミーター氏 (慶應義塾大学環境情報学部教授)
- https://www.futurelearn.com/courses/intro-to-quantum-computing
- 「低消費電力コンピューティングを実現するマルチコア技術」
- 授業運営スタッフ
- ティーチング・アシスタント
- 川村 聡宏氏 (2017年度WBS修了)
- 関田 康人氏 (2018年度WBS修了)
- 早稲田大学オープン・イノベーション戦略研究機構 科学技術と新事業創造リサーチ・ファクトリー
- 渡邊崇之氏 (ファクトリー・クリエイティブ・マネージャー: FCM)
- 塩月亨氏 (ファクトリー・クリエイティブ・マネージャー: FCM)
- ティーチング・アシスタント
- 授業運営協力者
- ゲスト参加
- 高田仁氏 (九州大学ビジネススクール教授)
- Eric Floyd氏 (カリフォルニア大学サンディエゴ校助教授)
- 樋原伸彦氏 (早稲田大学ビジネススクール准教授)
- 最終審査員
- 阿部博氏 (有限責任あずさ監査法人パートナー/公認会計士)
- 山下佳之氏 (損害保険ジャパン株式会社ビジネスクリエーション部部長)
- 浮田博文氏 (富士通株式会社グローバルマーケティング本部FUJITSU ACCELERATOR代表)
- メンター
- 森崎徹也氏 (損害保険ジャパン株式会社ビジネスクリエーション部課長)
- 金崎寛氏 (損害保険ジャパン株式会社ビジネスクリエーション部特命課長、WBS2018年度修了)
- 鈴木智裕氏 (富士通株式会社グローバルマーケティング本部FUJITSU ACCELERATOR)
- 菅かほり氏 (富士通株式会社グローバルマーケティング本部FUJITSU ACCELERATOR)
- 池田孝根氏(三井不動産株式会社開発企画部街づくり業務グループ統括)
- 上條由紀子 (長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター教授・弁理士)
- 松田大氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2018年度修了)
- 林田丞児, Ph.D. 氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2018年度修了)
- 高山千尋氏 (WBS2018年度修了)
- 土肥淳子氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 / WBS2017年度修了)
- ゲスト参加