技術・オペレーションのマネジメント 2018秋 (WBS)

授業シラバス

授業担当者: 牧 兼充 (kanetaka@kanetaka-maki.org)
オフィス: 早稲田キャンパス11号館1136号室
学期・曜日・時限: 秋学期(前半) / 土曜日 / 5限(16:30-18:00)、6限 (18:15-19:45)
教室: 11号館902号室
ティーチング・アシスタント:  土肥 淳子、川村聡宏
授業に関する連絡先: tomj2018f-staff@kanetaka-maki.org

このシラバスはあくまで暫定版であり、今後必要に応じて変更する。プリントアウト版ではなくウェブ版が最新なので常にウェブ版を参照のこと。

 

1. 授業概要

「技術・オペレーションのマネジメント」(TOM)は、技術経営と生産管理という二つの相互に関連する異なるトピックから成り立っている。TOMは、ハーバードビジネススクールを中心に発展してきた経営学の一分野であり、初期のTOMは、製品の開発・製造を含めた生産管理が中核であった。その後、情報通信技術、サプライ・チェーン、サービス産業の台頭などにより、生産管理の研究領域が拡大し、それに伴いTOMの研究領域も変化してきた。

現在のTOMは、製品やサービスの開発・製造における技術経営及びイノベーション・マネジメントに関する知見を提供することが主流となっている。

このコースにおいては、技術経営及びイノベーション・マネジメントの基礎をカバーし、必要に応じて先端領域に関する知見を提供する。このコースは、講義、ケース・スタディ、課題、実務家などのゲストスピーカーにより構成される。履修者はTOMの分野の基礎となるフレームワークを学び、その実務への応用方法をケース・スタディを通じて体験する。

このコースでは、以下の3タイプの履修者を想定している。

  • 技術系企業(大企業もしくはベンチャー企業)における経営者を目指すもの。
  • 技術系企業・ビジネスを中心とした投資家を目指すもの。
  • 技術系企業・ビジネスに関わるコンサルタントになることを目指すもの。

この授業は多様な分野の「技術」について扱うが、履修にあたってバックグラウンドとしての文系・理系を問わない。

2. 授業の到達目標

  1. 技術・イノベーションのマネジメントに関する分析ツールを提供する。
  2. 技術系ビジネスに必要なマーケット・リサーチのためのフレームワークを提供する。
  3. 先端的な技術系ビジネスのオーバービューを提供する。

3. 事前・事後学習の内容

  • 履修者は、事前予習文献を読み込み、事前課題を提出することが求められる (各回2時間程度の準備を想定)。
  • この授業では、英語のケースが含まれているので留意すること。

4. 授業計画

以下はあくまで予定であり、履修者のニーズ及びゲストスピーカーの都合により、変更の可能性もある。

  • 第1回 (9/29 5限): イントロダクション & イノベーション
    • トピック
      • イントロダクション
      • 授業の概要
      • イノベーションとは何か
      • シリコンバレーを中心としたイノベーション・エコシステム
    • 事前文献課題 (事務室にて1週間前から配布しているので、受け取りに行くこと)
      • 授業のシラバス
      • ピーター F. ドラッカー、「イノベーションの機会」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2010年6月
      • 冨山和彦、「AI経営で会社は蘇る」、文藝春秋、2017年 [第1章pp 19-89]
  • 第2回 (9/29 6限): デザイン思考(1)
    • トピック
      • デザイン思考の基礎
    • 事前文献課題
      • なし
    • 授業内配布
      • ティム・ブラウン、「IDEOデザインシンキング」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2008年12月
      • クレイトンM.クリステンセン、タディ・ホール、カレン・ディロン、「運頼みのイノベーションから脱却する方法 Jobs to Be Done: 顧客のニーズを見極めよ」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2017年3月
  • (授業終了後、有志にて懇親会)
  • 第3回 (10/6 5限): デザイン思考(2)
    • トピック
      • IDEOの製品開発
    • 事前課題
      • HBSケース、「IDEOの製品戦略」、HBS Case #600-143 (Case #612-J03)
    • 授業内配布
      • エド・キャットムル、「ピクサー 創造力のプラットフォーム」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2008年12月
    • 参考
      • ルー・マクレアリー、「IDEO流医療サービスのイノベーション」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2012年2月
      • ティム・ブラウン、ロジャー・マーティン、「IDEO流実行する組織のつくり方」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2016年4月
      • Tim Brown, “Leaders Can Turn Creativity into a Competitive Advantage”, Harvard Business Review Article
        • https://hbr.org/2016/11/leaders-can-turn-creativity-into-a-competitive-advantage
  • 第4回 (10/6 6限): ユーザ・イノベーション
    • トピック
      • ユーザ・イノベーション
    • 事前課題
      • HBSケース、「3Mコーポレーションにおけるイノベーション(A)」、HBS Case #699-012 (Case #607-J03)
    • 授業内配布
      • HBSケース、 “Innovation at 3M Corp. (B)”、HBS Case #699-013
  • 第5回 (10/13 5限): 技術ベースのスタートアップ
    • トピック
      • 技術ベースのスタートアップの特徴
    • 事前課題
      • HBSケース、”GolfLogix: Measuring the Game of Golf”、HBS Case #503-004
    • 授業内配布
      • ジョンT.グルビル、「新製品と消費者行動の経済学」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2007年7月
    • 参考
      • カール・シャピロ、ハル・R・バリアン、「顧客価値をとらえるバージョニング戦略」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、1999年4-5月
      • 中川理、日戸浩之、宮本弘之、「顧客ロックイン戦略」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2001年10月
      • モハンビル・ソーニー、「プロフェッショナルサービスを「機械化」する3つのステップ」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2017年1月
  • 第6回 (10/13 6限): Stanford Biodesign Program
    • トピック
      • Stanford Biodesign Program
      • ゲストスピーカー: 池野文昭氏 (Program Director (U.S) Japan Biodesign / Stanford Biodesign / Cardiovascular Medicine/MedVenture Partners取締役チーフメディカルオフィサー ) 「Stanford Biodesignとイノベーションを生みだすためのエコシステム」(仮)
    • 事前課題
      • 池野文昭、「シリコンバレー流産学共同」(Coronary Interventionにて連載)  [第39章から第59章]
  • (授業終了後、ヘルスケア部と合同でゲストを囲んだ懇親会)
  • 第7回 (10/20 5限): プラットフォーム・ビジネス
    • トピック
      • プラットフォーム
      • Googleのプラットフォーム戦略
      • ゲスト参加: 久米雅人氏 (グーグル合同会社ストラテジックリレーションシッププログラムマネージャー)
    •  事前課題
      • HBSケース、「2014年のグーグル(要約版)」、HBS Case #915-005 (Case #916-J01)
    • 授業内配布
      • Thomas R. Eisenmann, “Platform-Mediated Networks: Definitions and Core Concepts”, Harvard Business School Module Note (HBS Case #9-807-049)
  • 第8回 (10/20 6限): 先端的なテクノロジー・ビジネス: シェアード・エコノミー
    • トピック
      • シェアード・エコノミー
      • ウーバーのビジネス・モデルと戦略
      • ゲスト参加: 安永修章氏 (Uber Japan株式会社政府渉外・公共政策部長
    • 事前課題
      • HBSケース、「ウーバー: 世界の移動手段を変革する」、HBS Case #16011-02 (日本語ケース: #9-317-J01)
  • 第9回 (10/27 5限): 先端的なテクノロジー・ビジネス: ドローン産業
    • トピック
      • ドローン産業
      • イノベーションのジレンマ
      • ゲスト参加: 金子洋介氏 (Terra Drone株式会社事業戦略本部長UTM事業責任者) (予定)
    • 事前課題
      • The Asian Business Case Centre、”Da Jiang Innovations (DJI): The Rise of the Drones”、HBSP #NTU139
    • 授業内配布
      • クリス・アンダーソン、「ドローン・エコノミー: データ取得の革命がビジネスを変える」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2018年1月
      • ジョセフL.バウアー、クレイトンM.クリステンセン、「イノベーションのジレンマ」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2013年6月
      • キム・B・クラーク、カーリス・Y・ボールドウィン、「次世代のイノベーションを生む製品のモジュール化」、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、、1998年12-1月
  • 第10回 (10/27 6限): サービス・ビジネスのオペレーション
    • トピック
      • サービス・ビジネスのオペレーション
      • 「ベニハナ」のビジネス・モデル
      • オペレーションの基礎
    • 事前課題
      • HBSケース、「ベニハナ・オブ・トーキョー」、HBS Case #9-673-057 (Case: 9-607-J19)
  • 休講・オンライン学習 (11/10 5限・6限)
    • オンラインを活用した自習課題を活用して学んで下さい (1回分に相当) 。
    • 課題
      • HBS デジタル・ケース、”Bioinspiration at the San Diego Zoo”、Product #: 614703-HTM-ENG
      • HBS シミュレーション、”Operations Management Simulation: Benihana”、Product #: 7003-HTM-ENG
  • 第11回 (11/17 5限):先端的なテクノロジー・ビジネス: ゲノム産業
    • トピック
      • ゲノム産業の特徴
      • ゲスト参加: Takafumi Kobayashi氏 (Illumina Japan)
    • 事前課題
      • HBSケース、”23andMe: Genetic Testing For Consumers (A)”、HBS Case #514-086
    •  授業内配布
      • HBSケース、”23andMe: Genetic Testing For Consumers (B)”、HBS Case #514-095
      • HBSケース、”23andMe: Genetic Testing For Consumers (C)”、HBS Case #517-129
  • 第12回 (11/17 6限): イノベーション・トーナメント
    • トピック
      • イノベーション・トーナメント
      • オープン・イノベーション
    • 事前課題
      • HBSケース、「イノセンティブ・ドットコム(A)」、HBS Case #608-170 (Case: 9-612-J11)
  • 第13回 (11/24 5限): 科学の商業化、スター・サイエンティスト、サイエンス型ビジネス
    • トピック
      • 大学を基盤としたイノベーション
      • 科学の商業化
      • スター・サイエンティスト
      • サイエンス型ビジネスの特徴 / 製薬産業の特徴
    • 事前課題
      • HBSケース、「ランガー研究室: 科学の商業化」、HBS Case #605-017 (Case #608-J07)
      • 斎藤裕美・牧兼充、「スター・サイエンティストが拓く日本のイノベーション」、一橋ビジネスレビュー、2017年夏号、pp. 42-56
      • ゲイリーP. ピサノ、「バイオテクノロジーの幻想と挑戦」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2008年5月
    • 授業内配布
      • スティーブン・プロケッシュ、「「医療界のエジソン」がイノベーションを生み出し続ける仕組み」、ダイアモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2017年12月
  • 第14回 (11/24 6限 – 15分時間延長): まとめ & 日本のイノベーションの未来
    • トピック
      • まとめ/コース全体を振り返る / シリコンバレー・モデルの先にあるもの: 「リアルでシリアスな世界」
      • ゲスト・スピーカー: 末松誠氏 (国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)、「グローバルデータシェアリングによる医学・医療の課題解決」
    • 事前課題
      • 冨山和彦、「AI経営で会社は蘇る」、文藝春秋、2017年 [第1章pp 19-89]
    • 授業内配布
      • 知性の核心は……
    • (授業終了後、ヘルスケア部と合同でゲストを囲んだ懇親会)

5. 授業の進め方

  • ディスカッション主体。学生の事前の予習が強く求められる。
  • この授業では、履修者の積極的な参加が特に重要である。事前準備を手助けするために、授業担当者により、各セッションにおいて「事前課題」が準備されている。これらの「事前課題」は、授業のディスカッションをキックオフする役割を担う。
  • 各セッションの開始時には、履修者のうち数人が指名され、特定の質問への答えを求められる。事前準備をしたものはこれらの質問に答えられるはずである。その後、ディスカッションを授業の履修者全体に広げる。グループ全体で、ケースに関する深い分析を試みる。
  • 履修者は授業全体を通じて積極的な参加が求められる。ディスカッション時には「発言の質」において貢献することが求められる。
  • 授業をインタラクティブにするために、わせポチを積極的に利用する。スマートフォン、タブレットもしくはPCを授業に持ってくること。

6. 教科書

  • 授業担当者が選別したハーバードビジネススクールのケース・スタディ等を集めたコースリーダー

7. 参考文献

  • 「コア・テキスト イノベーション・マネジメント」、近能善範、高井文子著、新世社、2011年
  • 「MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト) 」、延岡健太郎著、日本経済新聞社、2006年
  • 「イノベーション・マネジメント入門(マネジメント・テキスト)〈第2版〉」、一橋大学イノベーション研究センター 編、日本経済新聞社、2007年
  • 「生産マネジメント入門〈1〉生産システム編 (マネジメント・テキスト) 」、藤本 隆宏著、日本経済新聞社、2001年
  • 「生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編 (マネジメント・テキスト) 単行本 – 2001/6/1
    藤本 隆宏 (著)

8.  成績評価方法

  • クラス・ディスカッションへの貢献度 – 40%
    • クラス内での議論への発言及びその質にて評価
  • 事前課題・クイズ – 30%
    • ケース・スタディに関する事前課題
  • 授業の出席 – 30%
    • 各回のクラス貢献シートやわせポチなどで評価

[クラス・ディスカッションへの貢献度とは]

  • 効果的にクラス・ディスカッションへ貢献するために重要なのはその頻度(量)ではない。
  • 以下の指標を参考にすること。
    1. 履修者は、クラス・ディスカッションにしっかりと集中しているか。ラップトップや携帯電話などのデバイスを授業の目的以外で利用することは、授業への参加や学習効果にマイナスの影響を及ぼすので注意されたい。
    2. 履修者は他者の発言を積極的に聞いているか。その発言はその時点のディスカッションに関連性が高いのか。過去のコメントにどのように繋がっているのか。コメントはケース分析によるエビデンスに基づいているのか。
    3. 新しいアイディアをテストしようとしているか、それとも安全なコメントをしようとしているか。具体的には、分析なしにケースに記述されている事実を繰り返し述べるだけのコメントは、「安全なコメント」と見なされる。
    4. コメントは、過去のコメントに積み上げる形で、ケースの深い理解につながっているのか。

9. 授業履修に際しての Honor Code

  • 早稲田ビジネススクールの定める「WBS 授業履修に際しての Honor Code」を遵守すること。
  • 本授業におけるHonor Code
    • 全ての課題については、履修者同士で相談しても構わない。必要に応じて、グループで議論することを推奨する。
    • 全ての授業準備、課題については、過去の授業の履修者、もしくは他大学における配布資料・ノート・授業スライドなどを参照することを禁止する。

10.備考・関連URL

  • 授業に関するお問い合わせはスタッフMLまでメールすること。教員個人メールやFBの個人チャットは埋もれてしまう可能性があり、またすべての問い合わせは記録の残る形でTAと共に共有したいと考えている。
  • このシラバスは、履修者のニーズ等に応じて、変更の可能性がある。
  • Kanetaka M. Maki, Ph.D. Official Web Page: https://kanetaka-maki.org/