[ STE Relay Column 011 ]
田巻 常治「STEを多角的な観点で振り返る」

田巻 常治 / 早稲田大学ビジネススクール2年

[プロフィール]この回を担当させて頂くことになりました、早稲田大学ビジネススクール全日制グローバル2年の田巻常治と申します。2017年度秋学期に牧先生が早稲田大学ビジネススクールに着任され開講した「Science, Technology and Entrepreneurship」の授業に参加させて頂き、それがご縁で今年度も同授業、及びその日本語版である「科学技術とアントレプレナーシップ」をTAとしてお手伝いさせて頂きました。英語2回、日本語1回で計3回授業に参加(史上初ではないでしょうか?)した経験から、本稿では同授業を受講生として見た側面、TAとして運営側から見た側面の両面から振り返ってみたいと思います。

受講生として見たScience, Technology and Entrepreneurship
 当時は1年次の秋学期という事で、大学院生活の1/4を消化し、勉強のペースを大分掴んできた頃でした。そんな中、かのUCサンディエゴから日本人教授がWBSにやってくると噂に聞き、海外経験ほぼゼロな私は、おお、なんかすごそうだな!と思ったのを覚えています。着任早々に二つ授業を持たれるとの事だったので早速シラバスを確認してみると、授業は全て英語で行うとの事。やめようかと思ったのですが、せっかくMBAにいるのに英語の授業を取らない手はないな、という気持ちから初回授業に参加してみる事にしました。二つあるうちから当該授業を選んだのは、自社(日用品メーカー)も研究所を持ち日々新しいネタを模索しているという事もあり、どの様に新しい知識がプロダクトとなって市場に出てくるのかという点に興味があったからです。加えて、これまで触れてこなかった実証研究系の論文を徹底的に読み込むという事で、これから自身で修士論文を書くにあたって基礎体力をつけたいという想いがありました。
 勢い余って受講(と言っても、英語に自信が無くお願いして聴講という形にしてもらったのですが)を決めたはいいものの、最初の頃は①英文を読むスピードが異常に遅い②統計の知識が曖昧で論文の肝である分析テーブルを見ても何が書いてあるのか分からない(最初はPoisson regressionという言葉を見てPoison?毒?なんか必殺技っぽいな!とか思ったりしていました。)という二重苦で、週に3本ある課題論文のうち最低1本を読んで1ページに要約をまとめるという課題に対し、一本あたり6-8時間くらいはかかっていました。しかも、英語力が足りない私はさらっと読んだだけでは授業での議論についてゆけず、意味が分かるレベルまで最低週に2本、できれば3本全て読む必要がありました。挫けそうになった時にはよくシラバスにある、「博士課程レベルの内容」という文面を読んで自分を慰めていたのを覚えています。そんな私ですが、授業を終える頃には論文を読むスピードもそこそこ上がり、議論でもそこそこな事をそこそこ言えるようになったように思います。
 扱う論文も科学者と企業の知識移転のメカニズム、アメリカと日本のエコシステムの違い、はたまたスタートアップにとってビジネスプランとチームメンバーどっちが大事!?など日本や身の回りの事例に置き換えて考えられる論点が沢山あり、今までの仕事生活ではあまり関わりのなかった領域について思考を深め自身の視野を広げる貴重な経験となりました。
 何より、論文の主張を鵜呑みにせず、4つの妥当性(Internal Validity, External Validity, Construct Validity, Statistical Conclusion Validity)に照らして批判的に論文を読むスキルを身に着けられた事が大きな財産だと感じています。endogeneity(内生性)という言葉には大分苦しめられましたが…。先生も仰っていましたが、こうした領域から縁遠いビジネスマンでも、今後はビジネスの共通言語としての科学的な思考法は実務上大きなアドバンテージ、というより必須スキルになってくるものと思われます。その意味で、自分史上最大級に大変でしたが確実に今後の糧になる、有意義な時間を過ごす事ができたと感じています。

TAとして見たScience. Technology and Entrepreneurship
 2018年からは読む論文の構成や本数も変わり、授業に参加するのは二回目三回目ではありますが毎回新鮮味のある内容でした。また、同じ学期に英語授業と日本語両授業のTAを担当する事で非常に面白い経験をする事ができました。両クラスとも受講生の皆さんが超優秀で毎回の議論から多くを学ばせてもらっていたのですが、英語と日本語クラスでは特にすごいなと思うポイントが違っているところがまた興味深かったです。
あくまで私の所感で一般化できるものではないと思いますが、英語クラスは統計の素養がある生徒が多い印象で、分析テーブルの解釈や妥当性といった丁寧な議論が行われていた印象です。4つの基準に沿ってきっちり批判的に論文を読み、議論でもそうした観点からの発言が多かった様に思います。
日本語クラスでは夜間生の方々が多いので、一番盛り上がるのは論文から実務への示唆を議論する場面だった様に思います。毎回課題論文に対して受講生の皆さんの日々の実務上の観点に紐づく様々なコメントが飛び交い、お金を払ってこの話を聞いてもいいんじゃないかってくらい刺激的で興味深い内容でした。
 これらの違いから分かるように、TAをやってみて、受講生によってクラスの特性が大きく変わるという印象を受けました。先生の言う、「授業は受講生が作るもの」というのはまさにこの事と思います。こうした違いを考えると、英語クラスと日本語クラスが半々くらいで混ざったらもっと多角的で面白い議論ができるのではないかなんて思ったりもします。
 最後になりましたが、今後もScience, Technology and Entrepreneurshipの授業が更にパワーアップし、色々な発見やコラボレーションが生まれる事を楽しみにしております!

 


次回の更新は10月5日(金)に行います。中外製薬株式会社の松田 大さんによる「キャリアは連続的な努力の先に非連続の成長がある~WBSを通じて求める人生の問い~」です。